2021-09-22
銭湯の人間模様
せんとう - 思い出シリーズ#14
中学1年まで住んでたアパートには風呂がなかったので、毎日銭湯に行っていた。
小学生の頃は家族と行った。父に頭から体まで全部洗ってもらっていた頃も覚えている。
風呂上がりにはよくラムネを飲んだ。
銭湯までは家族4人で歩いて行き、帰りもみんなで歩いて帰った。楽しかったのを覚えている。
帰り道、どれだけ歩いても同じ位置に月が見えるので、
「なんで僕が進んでも月はずっとおんなじとこにおるん?」
と父に聞いたのを覚えている。
父がなんと答えたのかは覚えていないが。
小学校高学年から中学生の頃は、近所の友達と行くようになった。家に風呂がない仲間が数人いたのだ。
いつも家族で行ってた一番近い銭湯ではなく、ちょっと遠いところまで自転車で行ったりもした。露天風呂やサウナ、寝風呂などがあるところがあったので、そういうとこに行くのも楽しかった。今ならスーパー銭湯に行けばいくらでもあるが、当時は割と珍しかったのだ。
ある銭湯ではゲームがおいてあった。
昔のゲームセンターによくあったテーブル型のゲームだ。
学校ではゲームセンターに行くことは禁止されていたが、ここではゲームができた。
ある日その銭湯に一人で行った。ゲームをしていると、不意に
「お前もここでゲームしてんのか」
と声が。不登校でめったに学校に来ないクラスメートだった。
ほとんど関わったこともなかったのだが、その日は一緒にゲームをした。
たしか「シーファイターポセイドン」だった。
話しかけてきたことにもびっくりしたが、今まで遊んだこともないのに、帰るまで楽しく遊べたことにも驚いた。イメージとは違う奴だった。
その後も学校にはほとんどこなかったが、なぜだったんだろうな。
※シーファイターポセイドンだが、調べてみたらプレステやNintendo Switchで遊べるようだ。懐かしい!)。
将棋盤がおいてあるところもあった。
風呂上がりに友達と将棋をしていると、知らないおっさんが見物する。
「あー。あかんわ」
「そうかー」
などうるさいが、楽しかった。
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中学2年になる前に引っ越した。小さいが一戸建ての持ち家だ。
風呂がある。
初めて自分の家で風呂に入る事ができてうれしかったが、銭湯に行くことはほぼなくなった。
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僕に子供ができてから、家族みんなで実家に帰った時に、十数年ぶりに幼い頃行った銭湯に、僕の家族と僕の両親の親子三代でいった。
番台のおばちゃんに話しかけると、しばらく考えた後思い出してくれた。
「よう来たなあ!」
とめっちゃ喜んでくれた。
自分の幼い頃の思い出の場所に子供を連れて行くのは感慨深いものがある。
子供を自分の幼い頃に重ね合わせると同時に、自分自身をあの頃の父に重ね合わせる。
父は今の僕を見て自分の若い頃、孫を見て僕の子供の頃を思い出したりしているのだろうか。
風呂上がりにはラムネを飲んだ。
全部番台のおばちゃんがおごってくれた。
昔父にしてもらったように、子供のラムネは僕が開けた。
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とりとめなく思い出を書いてみた。
銭湯は良いものだ。
最近は小さな銭湯はどんどんなくなり、スーパー銭湯ばかりになっている。
町の小さな銭湯にはどうか頑張って経営を続けてほしい。