プログラマによる技術記事を書かないブログ。

顕微鏡は買わなかった

けんびきょう  -  思い出シリーズ#9

顕微鏡が欲しくて貯金をしていた。
小学校低学年の頃。

なぜ顕微鏡が欲しくなったのか。

「科学者」に対するぼんやりとした憧れがあったとは思う。
ただその頃は「科学者」が具体的にどんな人たちなのかよくわかっておらず、
「白衣を着て何か研究みたいなことをしている頭がすごくいい人たち」
ぐらいの貧弱なイメージしかなかった。
何か得体の知れないものが入った試験管を持ち、顕微鏡を覗いて謎の何かを見ている。そんな人たち。
顕微鏡と試験管が「科学者」の象徴だったのだ。

自分でお金を貯めて買おうと思ったのにはきっかけがある。
出木杉君だ。

子供の頃は漫画やテレビにすぐ影響を受けたものだが、その頃特にドラえもんには影響を受けた(アニメも見たが原作の漫画が好きで、コミックスを1巻から集めていて今も大切に保管している)。
ドラえもんよろしく押し入れで寝てみたり、学校の裏山に憧れたり、スネ夫の影響で切手を集めたり、出木杉君の影響で十五少年漂流記を読んだりした。
その出木杉君、「顕微鏡を買うために近所の子の家庭教師をしたりして金を貯めていた」と話す回があったのである。
完璧超人出木杉君へのリスペクトがきっかけだったのだ。

そんなわけで、顕微鏡を買うべくお金を貯めていたのだが、結局買うことはなかった。
お金が貯まらなくて諦めたとかではなく、顕微鏡や科学者に対する憧れが薄まっていったんだと思う。
小学校でも学年が上がると理科の授業で顕微鏡を使うし、科学者に対するイメージもある程度具体的になってくる。顕微鏡を使うのは楽しかったが、頭のいいすごい科学者のシンボルではなくなっていったのだった。

貯金はある程度貯まってたと思うが、結局何に使ったかは覚えていない。
まあ、何かしょうもないものを買って少しずつなくなっていったんだろうな。


出木杉君のそのセリフをもう一度見てみようと思い、コミックスを探してみた。何度も読んでるので、どの話がだいたい何巻に載っているのかある程度絞り込める。
すぐに見つかった。
22巻の「税金鳥」という話。
立ち読みをしていて本屋から追い出されるのび太。自分と違いたくさんのマンガ本をまとめ買いできる金持ちのスネ夫を妬み、こづかいから税金を取るという「税金鳥」に頼ろうと画策。
のび太が仕掛けたこの税金鳥に、出木杉君は4万9千円取られているのである。
「けんび鏡がほしくていっしょうけんめいためた貯金だぞ。近所の小さな子の家庭教師をしたりして。」
と涙ながらに訴えるのである。
自分で努力してお金を稼いで貯める、天才な上に努力を惜しまない素敵な出木杉太郎君だった。
※今は「出木杉英才」という設定だが、僕が今見た昭和56年8月25日初版第一刷発行の22巻には「出木杉太郎ドノ、四万九千円」と税金鳥が言うセリフがある。

ついでに22巻を全部読んだ。
やっぱり好きだなあ、ドラえもん。

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